HACCP 7原則・12手順 実践マニュアル【厚生労働省基準準拠・2026年版】
最終更新日:2026年6月
対象読者:食品製造業・飲食店・給食施設・食品小売業の衛生管理責任者
目次
2. 準備5手順(手順1〜5)
11. よくある質問 10問
12. 著者情報・CTA
1. 導入 — HACCP 7原則・12手順の位置づけ
HACCPとは何か
HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害要因分析重要管理点)は、食品の原材料の受入れから最終製品の出荷に至るまでの全製造工程において、食品安全上の危害要因(ハザード)を科学的に分析し、特に重要な管理点を継続的に監視・記録することで、製品の安全性を確保する衛生管理手法です。
従来の「最終製品の抜き取り検査」とは根本的に異なり、製造工程そのものに安全性を組み込む予防的アプローチである点が最大の特徴です。
Codex委員会とHACCPの国際的位置づけ
HACCP 7原則12手順は、1993年にCodex(コーデックス)委員会が策定しました。Codex委員会は、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で設置した国際的な政府間機関であり、国際食品規格の策定を行っています。
Codex委員会が策定した食品規格は、WTO(世界貿易機関)の衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)において国際基準として認められており、各国の食品安全規制の基礎となっています。2020年には「食品衛生の一般原則(CXC 1-1969)」が改訂され、HACCPシステムの記述がさらに明確化されました。
参照元: 厚生労働省「コーデックス委員会の概要」(https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/codex/01.html)
日本の食品衛生法との関係
日本では、2018年6月に公布された改正食品衛生法により、原則として全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられ、2021年6月1日に完全施行されました。
食品衛生法施行規則(第66条の2第1項・第2項)に基づき、事業者の規模や業種に応じて以下の2つの衛生管理基準が設けられています。
| 区分 | 正式名称 | 旧称 | 対象事業者 | 内容 |
|---|---|---|---|---|
| **基準A** | HACCPに基づく衛生管理 | 旧基準A | 大規模事業者、と畜場、食鳥処理場等 | Codex HACCP 7原則に基づき、自ら危害要因分析を行い、HACCPプランを作成・管理 |
| **基準B** | HACCPの考え方を取り入れた衛生管理 | 旧基準B | 小規模事業者(従業員50人未満)、飲食店、販売業等 | 業界団体作成の手引書を参考に、簡略化されたアプローチで衛生管理を実施 |
参照元: 厚生労働省「食品衛生法の改正について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html)
本記事の活用法
本記事は、HACCPに基づく衛生管理(基準A)を中心に、Codex委員会の7原則12手順を日本の厚生労働省ガイドラインに即して、実務で即活用できるテンプレートと具体例とともに解説します。小規模事業者(基準B対象)の方も、手引書を活用する際の理解を深める参考資料としてご活用ください。
2. 準備5手順(手順1〜5)
HACCP 7原則を適用する前に、5つの準備手順を確実に実施する必要があります。この準備段階を疎かにすると、その後の危害要因分析やCCP決定の精度が大きく低下します。
手順1:HACCPチームの編成
なぜチーム編成が最初なのか
HACCPは一人の担当者だけで実施できるものではありません。製品の原材料から製造工程、品質管理、衛生管理、設備保全に至るまでの幅広い知識が必要であり、各部門の専門家による横断的チームの編成が不可欠です。
HACCPチーム役割表テンプレート
| 役割 | 担当者名 | 所属部門 | 主な責務 | 必要な専門知識 |
|---|---|---|---|---|
| **チームリーダー** | (記入) | 品質管理部 | チーム全体の統括、進捗管理、経営層への報告 | HACCP全般、食品衛生法規 |
| **製造工程担当** | (記入) | 製造部 | 製造工程の詳細情報提供、現場確認の主導 | 製造技術、設備操作 |
| **品質管理担当** | (記入) | 品質管理部 | 危害要因分析、CL設定、検証計画策定 | 微生物学、化学分析 |
| **衛生管理担当** | (記入) | 衛生管理部 | 一般衛生管理プログラム(PRP)の管理 | 食品衛生、清掃・洗浄・消毒 |
| **原材料管理担当** | (記入) | 購買部 | 原材料仕様書の管理、サプライヤー評価 | 原材料特性、アレルゲン管理 |
| **設備保全担当** | (記入) | 設備管理部 | 設備の保守点検、計測機器の校正管理 | 設備工学、計測技術 |
| **外部専門家**(必要時) | (記入) | 外部 | 専門的助言、教育訓練支援 | HACCP指導員資格等 |
実務ポイント:
手順2:製品説明書の作成
製品説明書の目的
製品説明書は、HACCPの対象となる製品の特性を網羅的に記述した文書です。後の危害要因分析の基礎資料となるため、正確かつ詳細に記載することが重要です。
製品説明書テンプレート(記入例:幕の内弁当)
| 記載事項 | 記入内容(例) |
|---|---|
| **製品名** | 幕の内弁当 |
| **製品の種類** | 弁当類(そうざい半製品) |
| **原材料** | 米、鶏肉、卵、野菜(人参・ごぼう・いんげん)、海老、醤油、みりん、砂糖、食塩、植物油、でんぷん |
| **食品添加物** | 調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、グリシン |
| **包装形態** | ポリスチレン製容器、ストレッチフィルム密封 |
| **内容量** | 450g |
| **特性(pH、Aw等)** | pH 5.8〜6.5、水分活性(Aw)0.96以上 |
| **保存方法** | 10℃以下で保存 |
| **消費期限** | 製造日を含め2日間 |
| **喫食方法** | そのまま喫食、または電子レンジで再加熱 |
| **販売先・流通方法** | コンビニエンスストア、冷蔵配送(チルド便) |
| **対象消費者** | 一般消費者(乳幼児・高齢者を含む不特定多数) |
| **アレルゲン情報** | 卵、えび、小麦、大豆、鶏肉(特定原材料等7品目中4品目該当) |
| **関連法規・規格** | 食品衛生法、弁当及びそうざいの衛生規範(厚生労働省通知) |
実務ポイント:
参照元: 厚生労働省「HACCP入門のための手引書」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000081880.pdf)
手順3:意図する用途の確認
なぜ用途と対象消費者の確認が必要か
同じ製品でも、喫食方法や対象消費者によってリスクの大きさが異なります。例えば、「加熱して食べる」製品と「そのまま食べる」製品では、残存する微生物のリスクが根本的に異なります。
確認すべき項目
| 確認項目 | 具体的内容 | リスクへの影響 |
|---|---|---|
| **喫食方法** | 加熱調理後に喫食 / そのまま喫食(Ready-to-Eat) | 加熱なしの場合、微生物リスクが高い |
| **対象消費者** | 一般成人 / 乳幼児 / 高齢者 / 免疫機能低下者 | ハイリスク集団の場合、より厳格な管理が必要 |
| **用途の範囲** | 業務用原材料 / 最終消費者向け / 学校給食用 | 給食用は大量調理衛生管理マニュアル準拠が必要 |
| **流通経路** | 店頭販売 / 宅配 / 通信販売 | 温度管理の途切れリスクが異なる |
| **消費者による取扱い** | 開封後すぐに消費 / 開封後保存して複数回に分けて消費 | 開封後の二次汚染リスク |
具体例(学校給食の場合):
学校給食では対象消費者に児童・生徒が含まれるため、文部科学省「学校給食衛生管理基準」および厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」の双方に準拠した管理が求められます。加熱調理食品の中心温度は75℃で1分間以上(ノロウイルス汚染の恐れがある食品は85〜90℃で90秒間以上)が基準となります。
手順4:製造工程一覧図(フローダイアグラム)の作成
フローダイアグラムとは
製造工程一覧図(フローダイアグラム)は、原材料の受入れから最終製品の出荷までの全工程を時系列に沿って図式化したものです。各工程の順序、相互関係、分岐点を明確にすることで、危害要因が発生しうるポイントを視覚的に把握できます。
フローダイアグラム作成例:弁当製造
以下に弁当(幕の内弁当)製造の工程一覧図の例を示します。
```
[原材料受入れ] ──→ [検品・検収] ──→ [冷蔵保管]
│
┌─────────────────────┘
↓
[下処理(洗浄・切裁)]
│
┌─────────┼─────────┐
↓ ↓ ↓
[炊飯工程] [煮物工程] [揚物工程] [焼物工程]
(米飯) (筑前煮等)(海老フライ等)(焼鮭等)
│ │ │ │
│ [加熱調理] [加熱調理] [加熱調理]
│ (85℃以上) (油温170℃以上)(中心75℃以上)
│ │ │ │
↓ ↓ ↓ ↓
[放冷・冷却]
(30分以内に20℃以下)
│
↓
[盛付け工程]
(室温25℃以下管理)
│
↓
[蓋締め・包装]
│
↓
[金属検出] ←── CCP候補
│
↓
[表示・ラベル貼付]
│
↓
[冷蔵保管]
(10℃以下)
│
↓
[出荷・配送]
(10℃以下冷蔵配送)
```
フローダイアグラム作成のポイント:
1. 全ての原材料の受入れから記載する(水、包装資材を含む)
2. 工程の分岐と合流を正確に表現する
3. 温度管理が必要な工程には温度条件を注記する
4. CCP候補となりうる工程にマークをつける
5. 手直し・リワーク工程がある場合は、戻りのフローも記載する
6. 廃棄物の処理経路も記載する
手順5:製造工程一覧図の現場確認
現場確認の実施方法
作成したフローダイアグラムが実際の製造現場と一致しているかを、HACCPチームのメンバー全員で現場を歩いて確認します。
現場確認チェックリスト
| 確認項目 | 確認内容 | 確認結果 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 工程の順序 | フローダイアグラム通りの順序で作業が行われているか | □適合 □不適合 | |
| 作業の流れ | 人の動線・物の動線に交差汚染のリスクはないか | □適合 □不適合 | |
| 温度管理 | 記載された温度条件で実際に管理されているか | □適合 □不適合 | |
| 時間管理 | 各工程の所要時間は記載通りか | □適合 □不適合 | |
| 使用設備 | 記載された設備が実際に使用されているか | □適合 □不適合 | |
| 手直し工程 | 記載されていない手直し・リワーク工程はないか | □適合 □不適合 | |
| 廃棄物処理 | 廃棄物の処理経路はフローに反映されているか | □適合 □不適合 | |
| 清掃・洗浄 | 工程間の清掃・洗浄手順は考慮されているか | □適合 □不適合 |
実務ポイント:
3. 原則1(手順6):危害要因分析
危害要因(ハザード)の3分類
食品における危害要因は、以下の3つに大別されます。
| 分類 | 定義 | 主な例 |
|---|---|---|
| **生物的危害要因** | 微生物、寄生虫など、生物に由来する危害 | サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌(O157等)、リステリア・モノサイトゲネス、ノロウイルス、アニサキス、カンピロバクター |
| **化学的危害要因** | 化学物質に由来する危害 | 残留農薬、動物用医薬品、食品添加物の過剰使用、重金属(カドミウム、水銀等)、ヒスタミン、アレルゲン、洗剤・消毒剤の残留、カビ毒(アフラトキシン等) |
| **物理的危害要因** | 異物など物理的な要因による危害 | 金属片、ガラス片、硬質プラスチック片、骨片、石、木片、毛髪 |
業種別 危害要因の具体例
食肉加工業の危害要因例
| 工程 | 生物的危害 | 化学的危害 | 物理的危害 |
|---|---|---|---|
| 原材料受入れ | サルモネラ、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌、リステリア | 残留動物用医薬品(抗生物質等)、残留農薬(飼料由来) | 骨片、注射針 |
| 冷蔵保管 | 低温増殖菌(リステリア等)の増殖 | ― | ― |
| 解凍 | 不適切な解凍による菌の増殖 | ― | ― |
| 整形・カット | 器具・手指からの交差汚染 | 潤滑油の混入 | 金属片(刃の破損)、骨片 |
| 塩漬け・調味 | ― | アレルゲン(小麦、大豆等調味料由来)、添加物の過量使用 | ― |
| 加熱(ボイル・スモーク等) | 加熱不足による病原菌の残存 | 燻煙由来のベンゾピレン | ― |
| 冷却 | 冷却不足による芽胞形成菌(ウェルシュ菌等)の増殖 | ― | ― |
| スライス・包装 | 加熱後の二次汚染 | ― | 金属片、包装資材の破片 |
水産加工業の危害要因例
| 工程 | 生物的危害 | 化学的危害 | 物理的危害 |
|---|---|---|---|
| 原材料受入れ | 腸炎ビブリオ、ノロウイルス(二枚貝)、アニサキス(生鮮魚介類)、リステリア | ヒスタミン(赤身魚)、重金属(水銀・カドミウム)、貝毒 | 釣り針、骨 |
| 解凍・水洗い | 不適切な温度管理による菌の増殖 | ― | ― |
| フィレ加工 | 加工器具からの交差汚染 | ― | 骨片、金属片 |
| 加熱(蒸煮等) | 加熱不足による病原菌・寄生虫の残存 | ― | ― |
| 成型(すり身加工等) | ― | アレルゲン(卵白等のつなぎ由来) | ― |
| 冷却・包装 | 加熱後の二次汚染、冷却不足 | ― | 金属片 |
弁当製造業の危害要因例
| 工程 | 生物的危害 | 化学的危害 | 物理的危害 |
|---|---|---|---|
| 原材料受入れ | 各原材料固有の病原微生物 | 残留農薬、食品添加物 | 異物全般 |
| 下処理(洗浄・切裁) | 野菜類の土壌由来菌(セレウス菌等) | 洗剤の残留 | 砂、石、虫 |
| 加熱調理 | **加熱不足による病原菌の残存** | 加熱油の劣化(過酸化物) | ― |
| 放冷 | **冷却不足による菌の増殖**(危険温度帯の長時間滞留) | ― | ― |
| 盛付け | **手指・器具からの二次汚染** | アレルゲンの交差接触 | 毛髪、手袋片 |
| 金属検出 | ― | ― | **金属異物の見逃し** |
| 冷蔵保管・配送 | 温度逸脱による菌の増殖 | ― | ― |
危害要因分析ワークシート テンプレート
| 工程番号 | 工程名 | 潜在的危害要因 | 危害の種類(B/C/P) | 発生頻度(高/中/低) | 重篤性(高/中/低) | 重要な危害要因か(Yes/No) | 判断根拠 | 管理手段 | CCPか(Yes/No) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 原材料受入れ | サルモネラ汚染 | B | 中 | 高 | Yes | 食肉由来の汚染実績あり | サプライヤー管理、受入検査 | No(後工程の加熱で管理) |
| 2 | 冷蔵保管 | 温度逸脱による菌の増殖 | B | 低 | 中 | Yes | 冷蔵庫故障リスク | 温度管理、PRPで管理 | No |
| 3 | 加熱調理 | 加熱不足による病原菌残存 | B | 中 | 高 | Yes | 殺菌不足は重大な健康被害 | 中心温度・時間管理 | **Yes(CCP-1)** |
| 4 | 冷却 | 冷却不足による菌の増殖 | B | 中 | 高 | Yes | ウェルシュ菌等の増殖リスク | 冷却時間・温度管理 | **Yes(CCP-2)** |
| 5 | 金属検出 | 金属異物の残存 | P | 低 | 高 | Yes | 金属片による口腔内損傷 | 金属検出器 | **Yes(CCP-3)** |
B=生物的(Biological)、C=化学的(Chemical)、P=物理的(Physical)
危害要因分析の実施ポイント:
1. 全ての原材料について、受入れ時の危害要因をまず列挙する
2. 全ての製造工程について、工程中に発生しうる危害要因を列挙する
3. 発生頻度と重篤性の両面から評価し、重要な危害要因を特定する
4. 各危害要因に対する管理手段(予防措置)を明記する
5. 管理手段が一般衛生管理(PRP)で管理可能か、CCPとして管理すべきかを判断する
参照元: 厚生労働省「食品製造におけるHACCPによる衛生管理普及のためのHACCPモデル例」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000126918.pdf)
4. 原則2(手順7):CCPの決定
重要管理点(CCP)とは
重要管理点(CCP:Critical Control Point)とは、危害要因を予防、除去、または許容可能なレベルまで低減するために管理が不可欠な工程のことです。CCPでの管理が適切に行われなければ、最終製品の安全性が確保できません。
CCP決定ツリー(デシジョンツリー)
Codex委員会のガイドラインに基づく、CCP決定のための判断フローチャートは以下の通りです。
```
質問1:この工程で特定された危害要因に対する管理手段が存在するか?
│
├─ はい → 質問2へ
│
└─ いいえ → この工程での管理は安全のために必要か?
│
├─ はい → 工程、製品、または工程フローを修正
│ → 質問1に戻る
│
└─ いいえ → CCPではない(停止)
質問2:この工程は、危害要因の発生を許容レベルまで低減するよう
特別に設計されているか?
│
├─ はい → CCP(この工程はCCPである)
│
└─ いいえ → 質問3へ
質問3:特定された危害要因による汚染が、許容レベルを超える、
または許容できないレベルまで増大する可能性があるか?
│
├─ はい → 質問4へ
│
└─ いいえ → CCPではない(停止)
質問4:この工程より後の工程で、特定された危害要因を許容レベルまで
除去または低減できるか?
│
├─ はい → CCPではない(停止)
│
└─ いいえ → CCP(この工程はCCPである)
```
CCP vs OPRP(オペレーション前提条件プログラム)の違い
HACCPシステムの中で、危害要因の管理は3つの階層に分かれます。
| 項目 | PRP(前提条件プログラム) | OPRP(オペレーションPRP) | CCP(重要管理点) |
|---|---|---|---|
| **目的** | 製造環境の基本的な衛生確保 | 特定の危害要因の発生可能性の低減 | 特定の危害要因の除去・許容レベルまでの低減 |
| **管理対象** | 製造環境全般 | 製造環境から食品へのハザード低減 | 食品からのハザード除去 |
| **モニタリング** | 日常的な確認(チェックリスト等) | 科学的測定値等による定期的モニタリング | 連続的または高頻度のモニタリング |
| **管理基準(CL)** | 設定不要 | 行動基準(Action Criteria)を設定 | 管理基準(CL)を設定(逸脱=安全性に直結) |
| **逸脱時の対応** | 日常的な是正 | 影響を受けた製品の評価・処置 | 即時の改善措置、製品の隔離・廃棄 |
| **具体例** | 手洗い、施設の清掃、防虫防鼠 | 原材料の受入検査、殺菌水による洗浄 | 加熱殺菌工程、金属検出工程 |
注意: OPRPは主にISO 22000で用いられる概念です。Codex HACCPシステムでは、PRPとCCPの2層構造が基本ですが、日本の実務においてはOPRPの考え方を取り入れることで、より効果的な管理が可能になります。
CCP決定の具体例テーブル
| 業種 | 工程 | 危害要因 | CCP判定 | 判定理由 |
|---|---|---|---|---|
| 食肉加工 | 加熱殺菌(ボイル) | 病原性微生物の残存 | **CCP** | この工程が病原菌を殺滅する唯一の工程 |
| 食肉加工 | 金属検出 | 金属異物 | **CCP** | 最終段階での異物除去工程 |
| 水産加工(かまぼこ) | 蒸煮工程 | 病原性微生物の残存 | **CCP** | 加熱による殺菌が安全確保の要 |
| 水産加工(刺身) | 冷蔵保管 | ヒスタミン生成 | **CCP** | 温度管理が唯一の管理手段 |
| 弁当製造 | 加熱調理 | 病原性微生物の残存 | **CCP** | 加熱工程以降に殺菌工程なし |
| 弁当製造 | 冷却工程 | ウェルシュ菌等の増殖 | **CCP** | 冷却速度が菌増殖を左右 |
| 弁当製造 | 金属検出 | 金属異物 | **CCP** | 出荷前の最終チェック |
| 乳製品 | 殺菌工程 | 病原性微生物の残存 | **CCP** | 殺菌条件が安全性を決定 |
| 缶詰 | レトルト殺菌 | ボツリヌス菌の残存 | **CCP** | 商業的無菌性の確保 |
5. 原則3(手順8):管理基準(CL)の設定
管理基準(CL)とは
管理基準(CL:Critical Limit)とは、CCPにおいて危害要因を許容レベル以下に管理するために守るべき限界値です。CLを逸脱した場合、その製品は安全でない可能性があると判断されます。
CLは科学的根拠に基づいて設定する必要があり、温度、時間、pH、水分活性(Aw)、塩分濃度、残留塩素濃度など、測定可能な数値で設定します。
CL設定の基本原則
1. 科学的根拠:公的機関のガイドライン、学術文献、自社の実験データ等に基づくこと
2. 測定可能性:現場で迅速に測定・判定できるパラメータであること
3. 妥当性確認:設定したCLで危害要因が確実に管理されることを検証すること
業種別 管理基準(CL)例テーブル
| 業種 | CCP工程 | 危害要因 | 管理基準(CL) | 科学的根拠 | 運転基準(OL)の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| **食肉加工** | 加熱殺菌 | 病原性微生物(サルモネラ等) | 中心温度 **75℃、1分間以上** | 厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」 | 中心温度 80℃、2分間以上 |
| **食肉加工** | 金属検出 | 金属異物 | Fe **1.5mm以上**、SUS **2.5mm以上**を検出 | 金属検出器メーカー仕様に基づく | テストピースによる始業・終業時確認 |
| **水産加工** | 蒸煮工程 | 病原性微生物 | 中心温度 **75℃、1分間以上** | 食品衛生法に基づく加熱基準 | 中心温度 80℃、3分間以上 |
| **水産加工(刺身類)** | 冷蔵保管 | ヒスタミン生成 | 保管温度 **5℃以下** | ヒスタミン生成菌の増殖温度に基づく | 保管温度 3℃以下 |
| **弁当製造** | 加熱調理 | 病原性微生物 | 中心温度 **75℃、1分間以上** | 厚生労働省基準 | 中心温度 80℃、1分間以上 |
| **弁当製造** | 冷却 | ウェルシュ菌等の増殖 | **30分以内に中心温度20℃以下**、または60分以内に中心温度10℃以下 | 「大量調理施設衛生管理マニュアル」 | 25分以内に20℃以下 |
| **乳製品** | HTST殺菌 | 病原性微生物 | **72℃、15秒間以上** | 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令) | 73℃、16秒間以上 |
| **乳製品** | UHT殺菌 | 病原性微生物 | **120〜150℃、1〜3秒間** | 乳等省令 | 製品仕様に準拠 |
| **清涼飲料水** | 殺菌工程 | 病原性微生物 | pH4.0未満:**65℃、10分間以上**、pH4.0以上4.6未満:**85℃、30分間以上** | 食品衛生法(清涼飲料水の規格基準) | 設定温度+2℃ |
| **缶詰・レトルト** | レトルト殺菌 | ボツリヌス菌 | **F0値=4以上**(120℃、4分間相当以上) | ボツリヌス菌芽胞の耐熱性に基づく | F0値=6以上(安全率を確保) |
ノロウイルス対応の留意点:
ノロウイルスの汚染の恐れがある食品(二枚貝等)については、厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」に基づき、中心温度85〜90℃で90秒間以上の加熱が求められます。
参照元: 厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成9年3月24日付け衛食第85号、最終改正:令和5年)
6. 原則4(手順9):モニタリング方法の設定
モニタリングの4W(What / When / Who / hoW)
CCPにおけるモニタリングは、以下の4Wを明確に設定する必要があります。
| 4W | 内容 | 設定のポイント |
|---|---|---|
| **What(何を)** | モニタリングの対象パラメータ | CLとして設定した測定項目(温度、時間、pH等) |
| **When(いつ)** | モニタリングの頻度・タイミング | 連続モニタリングが理想。不可能な場合は、管理基準の逸脱を確実に検出できる頻度 |
| **Who(誰が)** | モニタリングの実施者 | 訓練を受けた担当者を指名。責任と権限を明確化 |
| **hoW(どのように)** | モニタリングの方法・手順 | 使用機器、測定手順、判定基準、記録方法を具体的に規定 |
連続モニタリング vs 定期モニタリング
| 項目 | 連続モニタリング | 定期モニタリング |
|---|---|---|
| **定義** | 製造中、常時測定・記録を行う | 定められた頻度で測定・記録を行う |
| **適用例** | 自動温度記録計による加熱温度監視、ライン上の金属検出器 | 1時間ごとの温度測定、ロットごとのpH測定 |
| **メリット** | 逸脱を即座に検出可能、全数監視 | 設備投資が少ない、手動で実施可能 |
| **デメリット** | 設備投資が必要、データ量が膨大 | 測定間の逸脱を見逃すリスクがある |
| **推奨場面** | 重篤度が高く、連続管理が可能なCCP | 連続モニタリングが技術的・経済的に困難な場合 |
CCP別モニタリング設定例
| CCP | What(測定項目) | When(頻度) | Who(担当者) | hoW(方法) |
|---|---|---|---|---|
| CCP-1:加熱殺菌 | 製品中心温度、加熱時間 | 各バッチ / 連続 | 加熱工程担当者 | 中心温度計で各バッチ3点以上測定、自動温度記録計と併用 |
| CCP-2:冷却 | 製品中心温度、冷却開始・完了時刻 | 各バッチ | 冷却工程担当者 | 中心温度計で冷却開始時・30分後・60分後に測定 |
| CCP-3:金属検出 | 金属検出器の検出感度 | 全数検査(ラインモニタリング)+ 始業・昼休・終業時にテストピース確認 | 金属検出工程担当者 | Fe 1.5mm / SUS 2.5mm テストピースで検出確認 |
モニタリング記録様式テンプレート
加熱工程モニタリング記録
| 記録日 | 製品名 | バッチ番号 | 加熱開始時刻 | 加熱終了時刻 | 中心温度(℃)測定1 | 中心温度(℃)測定2 | 中心温度(℃)測定3 | CL適合判定 | 担当者 | 確認者 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| / / | : | : | ℃ | ℃ | ℃ | □適合 □逸脱 | |||||
| / / | : | : | ℃ | ℃ | ℃ | □適合 □逸脱 | |||||
| / / | : | : | ℃ | ℃ | ℃ | □適合 □逸脱 |
金属検出器モニタリング記録
| 記録日 | 確認タイミング | 製品名 | Fe テストピース結果 | SUS テストピース結果 | 検出器動作確認 | 排除装置動作確認 | 担当者 | 確認者 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| / / | □始業 □昼 □終業 | □検出OK □不良 | □検出OK □不良 | □正常 □異常 | □正常 □異常 |
7. 原則5(手順10):改善措置の設定
改善措置とは
改善措置(Corrective Action)とは、モニタリングの結果、CCPが管理基準(CL)を逸脱した場合に、直ちに講じるべき措置のことです。改善措置には以下の2つの側面があります。
1. 逸脱の原因を特定し、工程を管理状態に戻す
2. 逸脱の影響を受けた製品を適切に処置する
逸脱時の対応フローチャート
```
[モニタリングでCL逸脱を検出]
│
↓
[1. 工程の即時停止・隔離]
・該当工程を停止
・逸脱の影響を受けた製品を隔離
・HACCPチームリーダーに報告
│
↓
[2. 逸脱原因の特定]
・設備の故障か?
・操作ミスか?
・原材料の問題か?
・計測機器の不具合か?
│
↓
[3. 工程の復旧]
・原因を排除し、工程を管理状態に戻す
・CLが達成されていることを確認
│
↓
[4. 影響製品の評価・処置]
│
┌─────┴─────┐
↓ ↓
[安全性の [安全性が
確認が 確認できない]
可能] │
│ ↓
↓ [廃棄処分]
[再加工・ │
再検査] ↓
│ [記録・報告]
↓
[安全性確認
後に出荷]
│
↓
[記録・報告]
│
↓
[5. 再発防止策の実施]
・作業手順の見直し
・従業員の再教育
・設備の修理・交換
・モニタリング頻度の見直し
│
↓
[6. HACCPプランの見直し(必要に応じて)]
```
改善措置の設定例
| CCP | 想定される逸脱 | 改善措置(工程復旧) | 改善措置(製品処置) | 再発防止策 |
|---|---|---|---|---|
| 加熱殺菌 | 中心温度75℃未満 | 加熱装置の点検・修理、温度設定の修正 | 再加熱処理または廃棄 | 温度計の校正頻度見直し、加熱手順の再教育 |
| 冷却 | 30分後に20℃以下まで冷却できず | 冷却装置の増強、小分け対応 | 安全性評価の上、再冷却または廃棄 | 冷却装置の能力確認、バッチサイズの見直し |
| 金属検出 | テストピース不検出 | 金属検出器の調整・修理 | 最後の正常確認時以降の製品を再検査 | 検出器の定期メンテナンス計画の策定 |
改善措置記録様式テンプレート
| 記録日時 | CCP名 | 逸脱の内容 | 検出方法 | 影響を受けた製品(品名・ロット・数量) | 逸脱原因 | 工程復旧措置 | 製品処置 | 再発防止策 | 措置実施者 | 確認者(HACCPチームリーダー) | 完了日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| / / : | □再加工 □廃棄 □その他 | / / |
8. 原則6(手順11):検証手順の設定
検証とは
検証(Verification)とは、HACCPシステムが計画通りに実施され、効果的に機能しているかを確認する活動です。モニタリングが「CCPの日常的な管理状態の監視」であるのに対し、検証は「HACCPシステム全体の有効性を評価」するものです。
内部検証 vs 外部検証
| 項目 | 内部検証 | 外部検証 |
|---|---|---|
| **実施者** | 自社のHACCPチーム、品質管理部門 | 第三者認証機関、行政(保健所)、取引先 |
| **目的** | HACCPプランの実施状況と有効性の自己評価 | HACCPシステムの客観的な適合性評価 |
| **内容** | モニタリング記録の確認、計測機器の校正確認、製品検査、内部監査 | HACCP認証審査、行政による立入検査、取引先監査 |
| **頻度** | 定期的(日次〜年次)+ 随時 | 年1〜2回(認証維持審査等) |
| **法的位置づけ** | 食品衛生法施行規則に基づく自主管理の一環 | 任意(ただし輸出向け等で必要な場合あり) |
検証活動と頻度テーブル
| 検証活動 | 内容 | 頻度 | 担当者 |
|---|---|---|---|
| **モニタリング記録の確認** | 日々のモニタリング記録に不備や逸脱がないか確認 | **毎日**(製造日ごと) | 品質管理担当者 |
| **計測機器の校正** | 温度計、pH計、秤量器等の精度確認と校正 | **月1回**以上 | 設備保全担当者 |
| **CLの妥当性確認** | 設定した管理基準が危害要因を確実に管理できているか科学的に検証 | **年1回**以上、および原材料・工程変更時 | HACCPチーム |
| **製品の微生物検査** | 最終製品の微生物学的品質が基準を満たしているか確認 | **月1回〜週1回**(製品特性による) | 品質管理部門 / 外部検査機関 |
| **内部監査** | HACCPプラン全体の実施状況と有効性を監査 | **年1回**以上 | 内部監査員(HACCPチーム以外のメンバーが望ましい) |
| **HACCPプランの見直し** | 原材料、工程、設備、法規制等の変更に応じてHACCPプランを見直し | **年1回**以上 + 変更発生時 | HACCPチーム全員 |
| **従業員教育の実施確認** | HACCP関連の教育訓練が計画通り実施されているか確認 | **年2回**以上 | HACCPチームリーダー |
| **サプライヤー評価** | 原材料供給元の衛生管理状況の確認 | **年1回**以上 | 原材料管理担当者 |
微生物検査計画の例(弁当製造の場合)
| 検査対象 | 検査項目 | 基準値 | 検査頻度 | 検査方法 | 記録 |
|---|---|---|---|---|---|
| 最終製品(弁当) | 一般生菌数 | 10万/g以下 | 月2回 | 標準寒天培地法 | 検査成績書を保管 |
| 最終製品(弁当) | 大腸菌群 | 陰性 | 月2回 | デソキシコレート寒天培地法 | 同上 |
| 最終製品(弁当) | 黄色ブドウ球菌 | 陰性 | 月1回 | マンニット食塩培地法 | 同上 |
| 加熱後食品 | 一般生菌数 | 1万/g以下 | 月1回 | 標準寒天培地法 | 同上 |
| 調理器具(まな板等) | 大腸菌群 | 陰性 | 月1回 | 拭き取り検査(スタンプ法) | 同上 |
| 従業員手指 | 大腸菌群 | 陰性 | 月1回 | 拭き取り検査(スタンプ法) | 同上 |
| 使用水 | 大腸菌群 | 検出されないこと | 年1回以上 | 水質検査(水道法基準) | 同上 |
参照元: 厚生労働省「弁当及びそうざいの衛生規範」における微生物基準
9. 原則7(手順12):記録と文書管理
HACCPにおける記録の重要性
記録は、HACCPシステムが適切に運用されていることを証明する客観的証拠であると同時に、問題が発生した際の原因究明とトレーサビリティを確保するための基盤です。食品衛生法においても、衛生管理の実施状況の記録・保管が義務づけられています。
必要な記録一覧テーブル
| 文書・記録の種類 | 具体的内容 | 作成頻度 | 見直し頻度 |
|---|---|---|---|
| **HACCPプラン(基礎文書)** | |||
| HACCPチーム編成表 | チームメンバー、役割、責任 | チーム編成時 | メンバー変更時 |
| 製品説明書 | 製品特性、原材料、保存方法等 | 製品ごと | 配合・規格変更時 |
| 製造工程一覧図 | フローダイアグラム | 製品・工程ごと | 工程変更時 |
| 危害要因分析ワークシート | 危害要因の特定と評価 | 製品・工程ごと | 年1回以上 |
| CCP一覧表 | CCP、CL、モニタリング方法、改善措置の一覧 | 製品・工程ごと | 年1回以上 |
| **日常記録** | |||
| モニタリング記録 | 各CCPの測定値、判定結果 | 製造日ごと | ― |
| 改善措置記録 | 逸脱の内容、原因、処置、再発防止策 | 逸脱発生時 | ― |
| 一般衛生管理の実施記録 | 清掃・洗浄記録、温度管理記録等 | 毎日 | ― |
| **検証記録** | |||
| 計測機器校正記録 | 校正日、結果、次回校正予定 | 校正実施時 | ― |
| 製品検査記録 | 微生物検査、理化学検査の結果 | 検査実施時 | ― |
| 内部監査記録 | 監査日、指摘事項、是正措置 | 監査実施時 | ― |
| 教育訓練記録 | 教育内容、受講者、理解度確認 | 教育実施時 | ― |
| **その他** | |||
| クレーム・苦情対応記録 | 苦情内容、調査結果、対応措置 | 発生時 | ― |
| サプライヤー評価記録 | 評価日、評価結果、改善要請事項 | 評価実施時 | ― |
記録の保管期間(食品衛生法施行規則準拠)
記録の保管期間は、食品衛生法施行規則に基づき、取り扱う食品の流通実態(消費期限または賞味期限)に応じて合理的な期間を設定します。
| 事業段階 | 推奨保管期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| **生産段階・製造加工段階** | 販売後 **1〜3年間** | 厚生労働省通知に基づく参考基準 |
| **流通段階** | 販売後 **1〜3年間** | 同上 |
| **販売段階(小売等)** | 販売後 **1〜3ヶ月間** | 同上 |
| **賞味期限が長い製品(缶詰等)** | 賞味期限 + **1年間** | 流通実態に応じた設定 |
| **消費期限が短い製品(弁当等)** | 製造日から **最低1年間** | 実務的な推奨水準 |
実務上の推奨: 多くの食品製造事業者では、記録を3年間保管することが実務的な標準となっています。特に重大な食品事故の際の調査対応を考慮すると、3年以上の保管が望ましいとされています。
電子記録の要件
食品衛生法上、記録の媒体について紙・電子の限定はなく、電子記録も適法です。ただし、以下の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| **真正性の確保** | 改ざん防止措置(アクセス制御、操作ログの記録、電子署名等) |
| **見読性の確保** | 必要に応じて速やかに閲覧・印刷ができること |
| **保存性の確保** | 保管期間中、データの消失・劣化を防止する措置(バックアップ等) |
| **検索性の確保** | 日付、製品名、ロット番号等での検索が可能であること |
| **監査対応** | 行政や認証機関の監査時に記録を提示できる体制であること |
電子記録化のメリット:
10. 業種別HACCP導入チェックリスト
飲食店向けチェックリスト
※ 飲食店は原則として「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(旧基準B)の対象です。厚生労働省認定の「小規模な一般飲食店事業者向け手引書」(公益社団法人日本食品衛生協会作成)を活用してください。
| No. | チェック項目 | 確認 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 手引書を入手し、内容を理解したか | □ | 厚生労働省HPからダウンロード可能 |
| 2 | 衛生管理計画書を作成したか | □ | 手引書のひな形を活用 |
| 3 | 「一般衛生管理」の管理項目を記載したか | □ | 原材料の受入確認、庫内温度確認、交差汚染防止、手洗い等 |
| 4 | 「重要管理」の管理項目を記載したか | □ | 加熱調理、冷却調理、盛付け等の温度・時間管理 |
| 5 | メニューを3グループに分類したか | □ | (1)加熱しないもの (2)加熱するもの (3)加熱後冷却するもの |
| 6 | 記録様式を準備したか | □ | 手引書の記録表を活用(毎日記録) |
| 7 | 従業員に衛生管理計画の内容を周知したか | □ | 掲示、ミーティング等で周知 |
| 8 | 毎日の衛生管理の実施状況を記録しているか | □ | チェック形式でOK |
| 9 | 定期的に記録を振り返り、見直しを行っているか | □ | 月1回程度の振り返りを推奨 |
| 10 | 食品衛生責任者を設置しているか | □ | 食品衛生法に基づく義務 |
参照元: 厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000179541.pdf)
食品製造業向けチェックリスト
※ 従業員50人以上の食品製造業は「HACCPに基づく衛生管理」(旧基準A)の対象です。
| No. | チェック項目 | 確認 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | HACCPチームを編成したか | □ | 各部門の代表者で構成 |
| 2 | 全製品の製品説明書を作成したか | □ | 類似製品はグループ化可能 |
| 3 | 意図する用途と対象消費者を明確にしたか | □ | 製品説明書に記載 |
| 4 | 全製品の製造工程一覧図を作成したか | □ | フローダイアグラム形式 |
| 5 | 製造工程一覧図の現場確認を実施したか | □ | 稼働時に確認、記録を残す |
| 6 | 全工程の危害要因分析を実施したか | □ | 生物的・化学的・物理的の3分類 |
| 7 | CCPを決定し、CCP一覧表を作成したか | □ | デシジョンツリーを活用 |
| 8 | 各CCPの管理基準(CL)を設定したか | □ | 科学的根拠に基づく数値基準 |
| 9 | 各CCPのモニタリング方法を設定したか | □ | 4W(What/When/Who/hoW)を明確化 |
| 10 | 各CCPの改善措置手順を設定したか | □ | 逸脱時のフロー、製品処置を明文化 |
| 11 | 検証手順を設定したか | □ | 記録確認、校正、製品検査、内部監査 |
| 12 | 記録・文書管理の方法を設定したか | □ | 記録様式、保管期間、保管方法を規定 |
| 13 | 一般衛生管理プログラム(PRP)を整備したか | □ | 施設設備の衛生管理、従業員衛生等 |
| 14 | 従業員教育訓練計画を策定・実施しているか | □ | HACCP研修、衛生教育 |
| 15 | HACCPプランの定期的な見直しを行っているか | □ | 年1回以上 + 変更発生時 |
食品小売業向けチェックリスト
| No. | チェック項目 | 確認 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 該当する業種の手引書を入手したか | □ | 各業界団体作成の手引書を活用 |
| 2 | 衛生管理計画書を作成したか | □ | 取り扱う食品の特性に応じて作成 |
| 3 | 商品の温度管理基準を設定したか | □ | 冷蔵:10℃以下、冷凍:-15℃以下 |
| 4 | 陳列・保管の温度記録を行っているか | □ | 1日2回以上の温度確認・記録 |
| 5 | インストア加工の衛生管理を行っているか | □ | 惣菜等の店内調理がある場合 |
| 6 | 消費期限・賞味期限の管理を行っているか | □ | 先入れ先出し、期限切れ品の排除 |
| 7 | 従業員の衛生教育を実施しているか | □ | 手洗い、健康管理、衛生的な取扱い |
| 8 | アレルゲンの交差接触防止を行っているか | □ | 対面販売での情報提供を含む |
| 9 | 記録を保管しているか | □ | 販売後1〜3ヶ月間 |
| 10 | 定期的な振り返りを行っているか | □ | 月1回程度 |
給食施設向けチェックリスト
| No. | チェック項目 | 確認 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 大量調理施設衛生管理マニュアルを遵守しているか | □ | 同一メニュー1回300食以上又は1日750食以上提供する施設 |
| 2 | 衛生管理体制を整備したか | □ | 衛生管理者の指定、組織図の作成 |
| 3 | 調理工程表を作成したか | □ | メニューごとの工程と時間管理 |
| 4 | 検食を実施・保管しているか | □ | -20℃以下で2週間以上保存(50g以上) |
| 5 | 加熱調理の中心温度を記録しているか | □ | 75℃1分以上(ノロウイルス対策は85〜90℃90秒以上) |
| 6 | 冷却記録を取っているか | □ | 30分以内に中心温度20℃以下 |
| 7 | 調理後2時間以内に喫食されているか | □ | 調理後の時間管理が重要 |
| 8 | 原材料の検品・検収記録を取っているか | □ | 品温、鮮度、異物の有無 |
| 9 | 施設設備の定期点検を実施しているか | □ | 冷蔵庫、加熱機器、洗浄設備等 |
| 10 | 従業員の健康管理を実施しているか | □ | 月1回以上の検便(ノロウイルスは10月〜3月) |
11. よくある質問 10問
Q1. HACCPの7原則と12手順の違いは何ですか?
A. 12手順は、HACCP導入の全プロセスを指します。手順1〜5がHACCP適用の「準備段階」、手順6〜12が「7原則」に対応しています。つまり、7原則は12手順の中核部分(手順6〜12)であり、12手順は7原則に準備段階を加えた全体フレームワークです。1993年にCodex委員会がこの枠組みを策定し、日本の食品衛生法における制度化もこの構造に基づいています。
Q2. 小規模な飲食店でもHACCPの導入は必要ですか?
A. はい、必要です。2021年6月の改正食品衛生法の完全施行により、原則として全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられました。ただし、小規模事業者(従業員50人未満の製造・加工業、飲食店等)は、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(旧基準B)が適用され、業界団体作成の手引書に基づく簡略化されたアプローチで対応できます。厚生労働省のホームページから手引書を無料でダウンロードできます。
Q3. HACCPを導入しないと罰則はありますか?
A. 食品衛生法では、HACCPに沿った衛生管理を行わない場合、まず行政指導(改善指示)が行われます。改善指示に従わない場合は、営業の禁停止処分(食品衛生法第60条)が科される可能性があります。また、衛生管理の不備により食品事故が発生した場合は、食品の回収命令(食品衛生法第59条)、さらには刑事罰(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)の対象となることもあります。
Q4. CCPは何個設定すべきですか?
A. CCPの数に決まりはありませんが、必要最小限に絞ることが重要です。CCPが多すぎると、モニタリングや記録の負荷が過大になり、かえって管理の精度が低下します。一般的な食品製造施設では、2〜5個程度のCCPを設定することが多いです。加熱殺菌工程と金属検出工程は代表的なCCPですが、製品や工程の特性に応じてデシジョンツリーを用いて適切に判断してください。
Q5. 一般衛生管理(PRP)とHACCPの関係は?
A. 一般衛生管理プログラム(PRP:Prerequisite Program)は、HACCPの土台・前提条件です。施設の清掃・洗浄、従業員の衛生管理、防虫防鼠、使用水の管理など、食品衛生の基本的な取り組みがPRPに該当します。PRPが適切に整備されていないと、HACCPシステムは機能しません。食品衛生法施行規則の「別表第17」に一般衛生管理の基準が規定されており、全ての食品等事業者が遵守する必要があります。
Q6. HACCP記録はどのくらいの期間保管すべきですか?
A. 法令で一律の保管期間は定められていませんが、厚生労働省の通知では、取り扱う食品の流通実態に応じた合理的な期間を設定することとされています。目安として、製造・加工段階では販売後1〜3年間、販売段階では販売後1〜3ヶ月間が参考基準とされています。実務上は、食品事故発生時の調査対応を考慮して3年間の保管が一般的な水準です。
Q7. 記録は紙ではなく電子データでもよいですか?
A. はい、電子記録でも問題ありません。食品衛生法上、記録の媒体について紙・電子の限定はありません。ただし、真正性(改ざん防止)、見読性(閲覧・印刷が可能)、保存性(データの消失防止)の3要件を満たす必要があります。近年はHACCP記録管理アプリやクラウドサービスの導入も進んでおり、リアルタイムのデータ共有や逸脱の自動検知など、電子化のメリットを活用する事業者が増えています。
Q8. HACCPの認証を取得する必要はありますか?
A. 食品衛生法が求めているのは「HACCPに沿った衛生管理の実施」であり、第三者認証の取得は義務ではありません。ただし、取引先の要請、輸出対応(相手国の要件)、消費者への信頼性アピールなどの目的で、FSSC 22000、ISO 22000、SQF、JFS-B/C規格などの認証を取得する事業者もあります。認証の取得は任意ですが、HACCPシステムの実施そのものは全事業者に義務づけられています。
Q9. HACCPプランはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
A. 最低でも年1回のHACCPプラン見直し(再分析)を実施してください。加えて、以下のような変更が発生した場合は、その都度見直しが必要です:原材料やサプライヤーの変更、製造工程・設備の変更、新製品の追加、法規制の改正、食品事故や苦情の発生、内部監査や外部監査での指摘事項。HACCPプランは一度作成して終わりではなく、継続的に改善するものです。
Q10. HACCPの導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 事業所の規模や製品の種類によって異なりますが、一般的な食品製造施設では、HACCPチームの編成からプランの運用開始まで6ヶ月〜1年程度が目安です。小規模飲食店で手引書に基づく衛生管理を導入する場合は、1〜3ヶ月程度で対応可能です。導入期間を短縮するには、外部のHACCPコンサルタントの活用や、従業員への早期の教育訓練開始が有効です。
12. 著者情報・CTA
この記事について
本記事は、MmowW Food Safety Library(mmoww.net)の食品安全専門チームが、以下の公的資料を基に執筆しました。
主要参照文献・資料:
免責事項
本記事の内容は、2026年6月時点の法令・ガイドラインに基づいて作成しています。法令やガイドラインは随時改正される可能性がありますので、最新の情報は厚生労働省のホームページや管轄の保健所にてご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事業所における具体的な衛生管理計画の策定にあたっては、HACCP専門家や食品衛生監視員にご相談されることを推奨します。
MmowW Food Safety Library について
MmowW(mmoww.net)は、日本および世界各国の食品安全規制に関する最新情報を、実務者向けにわかりやすく提供する情報プラットフォームです。ドローン法令情報と食品安全情報の2つの柱で、法令パトロール(日次更新)、実務マニュアル、チェックリスト、テンプレートなどのコンテンツを提供しています。
本記事が「HACCPの7原則12手順」の理解と実務導入の一助となれば幸いです。 ご質問やご要望がございましたら、MmowW(mmoww.net)までお気軽にお問い合わせください。
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