食品衛生法改正 最新対応ガイド【2024-2026年】HACCP義務化後の実務と今後の展望
公開日: 2026年6月2日
最終更新日: 2026年6月2日
カテゴリ: 食品安全・法令
対象読者: 食品事業者全般(製造業、飲食店、販売業、輸入業)
読了時間: 約25分
目次
2. 2018年改正の7つの柱
6. 器具・容器包装のポジティブリスト制度(2020年6月~)
9. FAQ 10問
10. 著者情報・CTA
1. 導入 -- 食品衛生法の大改正から現在までの全体像
15年ぶりの抜本改正
食品衛生法(昭和22年法律第233号)は、戦後間もない1947年に制定されて以来、日本の食品安全行政の根幹を担ってきた法律です。2003年(平成15年)に大幅な改正が行われた後、しばらく大きな改正はありませんでした。
しかし、食品を取り巻く環境は大きく変化しました。
これらの変化に対応するため、2018年(平成30年)6月13日、「食品衛生法等の一部を改正する法律」(平成30年法律第46号)が公布されました。これは15年ぶりの抜本的な改正であり、日本の食品安全制度を根本から変える画期的な法改正でした。
施行タイムライン
改正法は一度に施行されたのではなく、各項目について段階的に施行されました。以下に全体のタイムラインを示します。
```
2018年6月13日 法律公布(平成30年法律第46号)
│
2019年4月1日 広域連携協議会に関する規定 施行
│
2019年6月1日 食品用器具・容器包装の規格基準の国際整合化 施行
│
2020年6月1日 ┌ HACCP制度化 施行(経過措置1年間)
│ ├ 営業許可・届出制度見直し 施行(経過措置3年間)
│ ├ ポジティブリスト制度 施行(経過措置5年間)
│ └ 食品リコール届出制度 施行(経過措置1年間)
│
2021年6月1日 ┌ HACCP完全義務化(経過措置終了)
│ └ 食品リコール届出義務化(経過措置終了)
│
2024年5月31日 営業許可・届出制度 経過措置終了
│
2025年6月1日 ポジティブリスト制度 経過措置終了・完全適用
│
2026年~ 各制度の運用定着・最新ガイドライン更新
```
本記事では、この7つの改正の柱を一つずつ解説し、2024年から2026年にかけての最新動向と、事業者が今すぐ取るべき行動を整理します。
2. 2018年改正の7つの柱
2018年の食品衛生法改正には、7つの大きな柱がありました。これらは相互に関連しながら、日本の食品安全制度を国際水準に引き上げることを目的としています。
柱1:広域的な食中毒事案への対策強化
背景: 2017年に関東を中心として発生した腸管出血性大腸菌O157による広域食中毒事案では、複数の都道府県にまたがる調査・対応に時間がかかり、被害が拡大しました。
改正内容:
施行日: 2019年4月1日
柱2:HACCPに沿った衛生管理の制度化
背景: 国際的にはHACCPによる衛生管理が標準となっており、コーデックス委員会をはじめ多くの国際機関がHACCPの採用を推奨していました。日本でも食品の輸出促進や国際基準との整合性の観点から、HACCP制度化が求められていました。
改正内容:
施行日: 2020年6月1日(経過措置1年間、2021年6月1日完全義務化)
柱3:特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の届出義務化
背景: いわゆる「健康食品」による健康被害事案が発生しており、被害の拡大防止のために情報収集体制の強化が必要でした。
改正内容:
施行日: 2020年6月1日
柱4:食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の導入
背景: 従来の日本の規制は、使用を禁止する物質を定める「ネガティブリスト制度」でした。しかし、EU、米国等の主要国では、安全性が確認された物質のみ使用を認める「ポジティブリスト制度」が採用されており、国際基準との整合性が課題でした。
改正内容:
施行日: 2020年6月1日(経過措置5年間、2025年6月1日完全適用)
柱5:営業許可制度の見直し・営業届出制度の創設
背景: 従来の営業許可制度は、制度創設以来大きな見直しが行われておらず、実態との乖離が生じていました。許可が不要な業種は行政が把握できないという問題もありました。
改正内容:
施行日: 2020年6月1日(経過措置3年間、2024年5月31日に経過措置終了)
柱6:食品リコール情報の届出義務化
背景: 食品の自主回収(リコール)情報は、従来、一部の自治体の条例で届出が義務付けられていたものの、全国統一の制度はありませんでした。消費者への情報提供が遅れるリスクがありました。
改正内容:
施行日: 2020年6月1日(経過措置1年間、2021年6月1日義務化)
柱7:輸出入食品の安全証明の充実
背景: 日本産食品の輸出促進と輸入食品の安全確保の両面から、国際的な食品安全証明の体制を充実させる必要がありました。
改正内容:
施行日: 段階的に施行
7つの柱の一覧比較表
| 柱 | 内容 | 施行日 | 経過措置 | 完全適用 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 広域食中毒対策 | 2019年4月 | なし | 2019年4月 |
| 2 | HACCP制度化 | 2020年6月 | 1年 | 2021年6月 |
| 3 | 健康被害情報届出 | 2020年6月 | なし | 2020年6月 |
| 4 | ポジティブリスト | 2020年6月 | 5年 | 2025年6月 |
| 5 | 営業許可見直し | 2020年6月 | 3年 | 2024年6月 |
| 6 | リコール届出 | 2020年6月 | 1年 | 2021年6月 |
| 7 | 輸出入安全証明 | 段階的 | -- | -- |
3. HACCP義務化の現状(2021年6月~)
完全義務化から5年
2021年6月1日のHACCP完全義務化から、2026年6月で丸5年が経過します。この間の実態と課題を整理します。
HACCP対応の二段階制度
改めて確認すると、日本のHACCP制度は以下の二段階で構成されています。
| 区分 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| **HACCPに基づく衛生管理**(基準A) | 大規模事業者(従業員50人以上)、と畜場、食鳥処理場 | コーデックスHACCP7原則に基づき、自ら危害要因分析を行い、衛生管理計画を策定・運用 |
| **HACCPの考え方を取り入れた衛生管理**(基準B) | 小規模事業者等(従業員50人未満の事業場、飲食店、小売販売等) | 業界団体が作成し厚生労働省が確認した手引書に沿って衛生管理を実施 |
現在の手引書整備状況
厚生労働省は、業界団体が作成した手引書の内容を「食品衛生管理に関する技術検討会」で確認しています。2026年6月時点で、基準A向け(HACCPに基づく衛生管理)の手引書と基準B向け(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)の手引書を合わせて、100を超える手引書が厚生労働省ウェブサイトに掲載されています。
手引書は定期的に改訂されており、直近では以下の動きがあります。
HACCP義務化後の実態と課題
課題1:小規模事業者の対応の遅れ
厚生労働省が実施する「食品衛生法改正事項実態把握等事業」の結果によると、大規模事業者のHACCP対応率は高い水準にある一方、小規模飲食店等では依然として対応が不十分な事例が見られます。
主な要因としては、以下が挙げられます。
課題2:記録の形骸化
衛生管理計画を作成し記録を付けている事業者でも、「毎日すべて○を付けるだけの作業」になっている事例が少なくありません。問題が発生しても記録に反映されず、振り返り(見直し)も行われていないケースが見られます。
課題3:手引書の認知と活用
自分の業種に該当する手引書の存在を知らない事業者や、手引書をダウンロードしたものの読んでいない事業者がいます。厚生労働省の手引書検索システム(https://haccp.shokusan.or.jp/guideline/)の認知度向上が課題です。
保健所の監視・指導の状況
HACCP完全義務化以降、保健所の食品衛生監視員による立入検査では、HACCP対応状況の確認が重要な検査項目となっています。具体的には以下を確認しています。
1. 衛生管理計画書の有無
2. 記録表の記入状況
3. 振り返り(見直し)の実施状況
4. 従業員への周知状況
当初は「まずは計画書を作ること」を重視した指導が行われていましたが、義務化から5年が経過した現在は、記録の実質的な運用と定期的な振り返りを重点的に確認する方向にシフトしています。
4. 営業許可・届出制度の変更点
制度改正の背景
従来の食品衛生法では、34業種に対して営業許可が必要でしたが、制度創設以来大きな見直しが行われていなかったため、以下の問題がありました。
新しい営業許可業種(32業種)
2021年6月1日から、営業許可の対象業種が旧34業種から新32業種へ再編されました。
営業許可が必要な32業種
【調理業】
| No. | 業種 | 概要 |
|---|---|---|
| 1 | 飲食店営業 | 食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業 |
| 2 | 調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業 | カップ麺の調理・提供等を行う自動販売機 |
【製造業】
| No. | 業種 | 概要 |
|---|---|---|
| 3 | 菓子製造業 | パン、あめ、菓子等を製造する営業 |
| 4 | アイスクリーム類製造業 | アイスクリーム、アイスシャーベット等を製造する営業 |
| 5 | 乳製品製造業 | 乳を加工・製造する営業 |
| 6 | 清涼飲料水製造業 | ジュース、炭酸飲料等を製造する営業 |
| 7 | 食肉製品製造業 | ハム、ソーセージ、ベーコン等を製造する営業 |
| 8 | 水産製品製造業 | 魚介類を加工・製造する営業 |
| 9 | 氷雪製造業 | 氷を製造する営業 |
| 10 | 液卵製造業 | 鶏卵から殻を除去して得た卵の内容物を製造する営業 |
| 11 | 食用油脂製造業 | 食用の油脂を製造する営業 |
| 12 | みそ又はしょうゆ製造業 | みそ又はしょうゆを製造する営業 |
| 13 | 酒類製造業 | 酒類を製造する営業 |
| 14 | 豆腐製造業 | 豆腐を製造する営業 |
| 15 | 納豆製造業 | 納豆を製造する営業 |
| 16 | 麺類製造業 | 生めん、ゆでめん等を製造する営業 |
| 17 | そうざい製造業 | 惣菜を製造する営業 |
| 18 | 複合型そうざい製造業 | 製造量が大きいそうざい製造 |
| 19 | 冷凍食品製造業 | 冷凍食品を製造する営業 |
| 20 | 複合型冷凍食品製造業 | 製造量が大きい冷凍食品製造 |
| 21 | 漬物製造業 | 漬物を製造する営業 |
| 22 | 密封包装食品製造業 | 缶詰、レトルトパウチ等を製造する営業 |
| 23 | 食品の放射線照射業 | 食品に放射線を照射する営業 |
| 24 | 添加物製造業 | 食品添加物を製造する営業 |
【処理業】
| No. | 業種 | 概要 |
|---|---|---|
| 25 | 乳処理業 | 牛乳等を殺菌処理する営業 |
| 26 | 特別牛乳搾取処理業 | 特別牛乳を搾取・処理する営業 |
| 27 | 集乳業 | 生乳を集荷する営業 |
| 28 | 食肉処理業 | 食用の獣畜・家きんを処理する営業 |
【販売業】
| No. | 業種 | 概要 |
|---|---|---|
| 29 | 食肉販売業 | 食肉を専門に販売する営業 |
| 30 | 魚介類販売業 | 魚介類を専門に販売する営業 |
| 31 | 魚介類競り売り営業 | 魚介類を競り売りする営業 |
| 32 | 乳類販売業 | 乳を専門に販売する営業 |
営業届出制度の創設
営業許可が不要な食品関係事業者であっても、営業届出が必要となりました。届出は管轄の保健所に対して行い、届出を行った事業者にはHACCPに沿った衛生管理と食品衛生責任者の設置が義務付けられます。
届出が必要な業種の例
届出が不要な業種
以下の業種は、公衆衛生に与える影響が少ないとして、届出も不要です。
旧制度との比較表
| 項目 | 旧制度 | 新制度(2021年6月~) |
|---|---|---|
| 許可業種数 | 34業種 | 32業種 |
| 届出制度 | なし | あり(許可不要な食品営業者が対象) |
| 施設基準 | 都道府県条例で規定 | 厚生労働省令で全国統一 |
| HACCP | 努力義務 | 義務(許可・届出の要件) |
| 食品衛生責任者 | 一部業種で必要 | 許可・届出を行う全業種で必要 |
| 経過措置 | -- | 3年間(2024年5月31日終了) |
経過措置の終了(2024年5月31日)
営業許可・届出制度の経過措置は2024年5月31日に終了しました。これにより、以下の対応が完了していない事業者は法令違反の状態にあります。
5. 食品リコール届出義務(2021年6月~)
制度の概要
2021年6月1日から、食品の自主回収(リコール)を行う場合、行政への届出が義務化されました。この制度は、食品衛生法と食品表示法の両方に基づいています。
届出が必要な場合
食品衛生法に基づく届出
例: 基準値を超える残留農薬が検出された、大腸菌群の基準不適合、異物混入(ガラス片等の健康被害の恐れがあるもの)
食品表示法に基づく届出
例: アレルゲン(卵、乳等)の表示漏れ、消費期限の誤表示、原材料名の記載誤り
届出の手続きフロー
```
ステップ1:自主回収の決定
│
├─ 食品衛生法違反又はそのおそれ → 食品衛生法に基づく届出
│
└─ 食品表示法違反 → 食品表示法に基づく届出
│
ステップ2:届出の提出
│
├─ 届出先:主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事
│ (実務上は保健所を通じて届出)
│
├─ 届出方法:厚生労働省「食品衛生申請等システム」の
│ 「食品等自主回収情報管理機能」を使用(オンライン)
│
└─ 届出時期:自主回収に着手した後、遅滞なく届出
│
ステップ3:回収の実施
│
├─ 消費者への周知(店頭告知、ウェブサイト掲載等)
│
├─ 販売先への連絡・回収依頼
│
└─ 回収品の保管・廃棄
│
ステップ4:届出内容の更新
│
├─ 回収の進捗状況を更新
│
└─ 回収完了時に完了届出
│
ステップ5:原因究明と再発防止
│
├─ 原因の調査・特定
│
└─ 再発防止策の策定・実施
```
届出事項
届出には以下の情報が必要です。
罰則
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 届出をしなかった場合 | 50万円以下の罰金 |
| 虚偽の届出をした場合 | 50万円以下の罰金 |
リコール情報の一元管理
届出された情報は、厚生労働省の食品衛生申請等システム及び消費者庁の食品表示リコール情報サイトで公開されます。消費者は、これらのサイトで回収中の食品の情報を確認できます。
2024年度以降の変更点
2024年度から、自主回収届は厚生労働省のリコール情報報告システム(RMS)へのオンライン入力が原則となりました。紙での届出は原則として受け付けられなくなっていますので、事前にシステムへのアカウント登録を済ませておくことを推奨します。
6. 器具・容器包装のポジティブリスト制度(2020年6月~)
制度の概要
食品用器具・容器包装に使用される合成樹脂(プラスチック)について、安全性が評価された物質のみ使用を認めるポジティブリスト制度が導入されました。
ネガティブリストからポジティブリストへ
| 項目 | 旧制度(ネガティブリスト) | 新制度(ポジティブリスト) |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 使用を禁止する物質を指定(それ以外は使用可能) | 使用を認める物質を指定(リストにない物質は使用不可) |
| 安全性の確認 | 禁止物質以外は安全性の確認なく使用可能 | リスト掲載にあたり安全性を評価 |
| 国際整合性 | 主要国はポジティブリスト制度を採用しており、日本は遅れていた | EU・米国等の国際基準と整合 |
| カバー範囲 | 限定的 | 包括的 |
対象範囲
ポジティブリスト制度の対象は、食品衛生法施行令第1条に基づき、合成樹脂を使用した食品用器具・容器包装です。
対象となるもの:
対象外:
ポジティブリストの構成
ポジティブリストは以下の2つのリストで構成されています。
1. 基ポリマーリスト: 基材となる合成樹脂の原料(モノマー等)及び合成樹脂(21分類)
2. 添加剤リスト: 合成樹脂に使用される添加剤(2025年6月1日時点で840種類以上)
各物質には、必要に応じて使用制限(対象食品の種類、温度条件、溶出量の上限等)が設定されています。
経過措置の終了(2025年6月1日)
2025年6月1日に経過措置が終了し、ポジティブリスト制度が完全に適用されるようになりました。ただし、重要な例外規定があります。
既存物質の取扱い:
新規物質の取扱い:
食品事業者が確認すべきこと
1. 仕入先への確認: 使用している器具・容器包装がポジティブリストに適合していることを、仕入先(容器メーカー等)に確認する
2. 適合証明の入手: 仕入先から「ポジティブリスト適合確認書」等の書類を入手し、保管する
3. 新規導入時の確認: 新しい容器や包装資材を導入する際は、ポジティブリスト適合を確認してから導入する
罰則
ポジティブリストに適合しない器具・容器包装を使用した場合:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
7. 2024-2026年の最新動向
2024年の主な動き
営業許可経過措置の完全終了(2024年5月31日)
2021年6月1日から3年間の経過措置期間が設けられていた営業許可・届出制度について、2024年5月31日に経過措置が終了しました。これにより、すべての食品等事業者は新制度に基づく営業許可の取得又は営業届出の提出を完了している必要があります。
リコール届出のオンライン化推進
2024年度から、食品リコール情報の届出は原則として厚生労働省のリコール情報報告システム(RMS)を通じたオンライン入力が必須となりました。
機能性表示食品制度の改正(2024年8月)
2024年8月23日に食品表示基準が改正され、機能性表示食品制度に以下の変更が加えられました。
経過措置: GMPへの適合及び表示方法の見直しに関する規定の経過措置期間は2026年8月31日までです。
手引書ガイダンスの改正(2024年8月30日)
厚生労働省は「食品等事業者団体による衛生管理計画手引書策定のためのガイダンス」を一部改正しました。これにより、手引書の作成・改訂に関する指針が更新されています。
2025年の主な動き
ポジティブリスト制度の完全適用(2025年6月1日)
5年間の経過措置が終了し、食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度が完全に適用されるようになりました。
ポジティブリストには以下が収載されています。
食品事業者は、使用する器具・容器包装がポジティブリストに適合していることを確認する必要があります。
食品事業者向け法改正対応の総まとめ
2025年以降、2018年改正のすべての経過措置が終了し、改正食品衛生法は完全施行状態に入りました。事業者は以下のすべてに対応している必要があります。
2026年の注目点
HACCP手引書の継続的改訂
業界団体による手引書の改訂が継続しています。特に注目すべきは、2026年1月15日に改訂された小規模一般飲食店向け手引書です。この改訂では以下の点が変更されました。
機能性表示食品の経過措置期限(2026年8月31日)
2024年8月の食品表示基準改正に伴うGMP適合及び表示方法見直しの経過措置が2026年8月31日に終了します。機能性表示食品を製造・販売する事業者は、この期限までに対応を完了する必要があります。
デジタル化の推進
食品衛生行政のデジタル化が進んでいます。食品衛生申請等システムの機能拡充や、自治体間の情報連携強化が継続的に進められています。
今後の展望
2018年改正から8年が経過し、制度の枠組みは整いました。今後は以下の方向に進むと予想されます。
1. 運用の質の向上: 形式的な対応から実質的な食品安全の向上へ
2. デジタル化の加速: 衛生管理記録のデジタル化、IoT技術の活用(温度の自動記録等)
3. 国際整合性のさらなる推進: 食品輸出の拡大に伴う国際基準への対応強化
4. 手引書の継続的改訂: 最新の科学的知見や事故事例を反映した手引書の更新
8. 事業者が今すぐやるべきこと(チェックリスト)
2026年6月時点で、すべての経過措置が終了しています。以下のチェックリストで、自社の対応状況を確認してください。
HACCP関連
営業許可・届出関連
リコール対応関連
ポジティブリスト関連
その他
未対応の場合のリスク
上記のチェック項目に未対応がある場合、以下のリスクがあります。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| **行政処分** | 営業許可の取消し、営業の禁停止(食品衛生法第56条) |
| **罰則** | 50万円以下の罰金(HACCP義務違反)、50万円以下の罰金(リコール届出義務違反)、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(ポジティブリスト違反) |
| **信用リスク** | 保健所の行政処分は公表される場合があり、事業の信用に影響 |
| **民事責任** | 食品事故発生時の損害賠償責任(製造物責任法を含む) |
9. FAQ 10問
Q1:2018年の食品衛生法改正は、すべての食品事業者に関係しますか?
A1: はい、原則としてすべての食品等事業者に関係します。食品の製造、加工、調理、販売、貯蔵、運搬等を行う事業者は、規模の大小を問わず、改正法に基づく対応が必要です。ただし、食品の輸入業、運搬業(冷凍冷蔵を除く)、常温で長期保存可能な容器包装食品の販売業、農業及び水産業における食品の採取業は、届出も不要とされています。
Q2:営業許可と営業届出の違いは何ですか?
A2: 営業許可は、食中毒等のリスクが比較的高い32業種に対して必要で、保健所による施設の検査を受けて許可を取得します。有効期間があり、更新が必要です。営業届出は、許可業種以外の食品関係事業者が保健所に届け出るもので、施設検査は不要です。有効期間はなく、届出内容に変更があった場合に変更届を提出します。どちらの場合も、HACCPに沿った衛生管理と食品衛生責任者の設置が義務付けられています。
Q3:旧制度の営業許可を持っていますが、新制度への切り替えは必要ですか?
A3: 旧制度の営業許可は、その有効期間が満了するまで有効です。ただし、2024年5月31日に経過措置が終了していますので、業種の再編により新たに許可が必要となった業種や、届出が必要となった業種については、既に対応が完了している必要があります。次回の更新時に新制度の施設基準が適用されます。不明な場合は管轄の保健所にお問い合わせください。
Q4:食品リコール届出は、どんな場合でも必要ですか?
A4: 食品リコール届出は、食品衛生法違反又はそのおそれがある場合と、食品表示法違反の場合に義務付けられています。ただし、例えば「味が違う」「パッケージデザインが誤っている」など、食品衛生上の問題や表示法違反がない単なる品質上の理由による自主回収の場合は、法律上の届出義務はありません。ただし、消費者への情報提供の観点から任意で届出を行うことは推奨されます。
Q5:ポジティブリスト制度は、飲食店にも関係しますか?
A5: 直接的には、器具・容器包装の製造業者や輸入業者が主な対象です。しかし、飲食店も合成樹脂製の調理器具(まな板、ヘラ等)や容器(テイクアウト容器等)を使用しますので、間接的に関係します。飲食店としては、仕入先からポジティブリスト適合品であることを確認して購入すれば問題ありません。不明な場合は仕入先に確認してください。
Q6:HACCP対応は外部認証(ISO 22000等)を取得すれば済みますか?
A6: 外部認証の取得は、HACCP対応の一つの方法ですが、法律上は外部認証の取得を要求していません。食品衛生法が求めているのは、「HACCPに沿った衛生管理」の実施です。大規模事業者は自ら危害要因分析を行い衛生管理計画を策定・運用すること、小規模事業者は手引書に沿った衛生管理を行うことが求められます。外部認証は任意であり、取引先の要求等に応じて個別に判断してください。
Q7:食品衛生責任者は誰がなれますか?
A7: 食品衛生責任者は、以下のいずれかの資格・要件を満たす者がなれます。
食品衛生責任者養成講習会は、各都道府県の食品衛生協会等が実施しており、約6時間の講習を受講することで修了証が交付されます。eラーニングによる受講も一部の地域で可能です。
Q8:複数の店舗を経営していますが、衛生管理計画は共通で使えますか?
A8: 基本的な衛生管理計画の枠組み(テンプレート)は共通化できますが、各店舗の実態に合わせたカスタマイズが必要です。店舗ごとに設備の配置、メニュー、従業員数等が異なるため、例えば冷蔵庫の台数や配置、提供メニューに応じた重要管理のポイント等は店舗ごとに設定する必要があります。記録も店舗ごとに付ける必要があります。
Q9:食品衛生法に違反した場合、どのような処分がありますか?
A9: 違反の内容と程度により、以下の処分があり得ます。
| 処分の種類 | 根拠条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 改善指導 | -- | 行政指導として改善を求める(最も軽微) |
| 営業禁停止 | 第56条 | 一定期間の営業停止又は営業禁止 |
| 営業許可取消し | 第56条 | 営業許可の取消し |
| 罰則(HACCP関連) | 第82条 | 50万円以下の罰金 |
| 罰則(リコール届出) | 第84条 | 50万円以下の罰金 |
| 罰則(ポジティブリスト) | 第81条 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
| 罰則(営業許可なし営業) | 第82条 | 2年以下の懲役又は200万円以下の罰金 |
なお、行政処分(営業禁停止等)の情報は公表される場合があり、事業の信用に大きな影響を及ぼす可能性があります。
Q10:今後、食品衛生法はさらに改正される予定はありますか?
A10: 食品衛生法は社会情勢や食品安全上の課題に応じて随時見直しが行われます。現時点で具体的な大規模改正の予定は公表されていませんが、以下の分野で動きが予想されます。
最新情報は厚生労働省の報道発表資料やウェブサイトで随時公開されますので、定期的にチェックすることをお勧めします。
10. 著者情報・CTA
この記事について
本記事は、食品法規制の専門家チームが、食品衛生法、食品表示法及び関連法令の条文、厚生労働省・消費者庁の公式発表資料、各自治体の公表情報に基づき執筆しました。記事の内容は2026年6月時点の法令・通知に基づいています。法令改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は各省庁のウェブサイトでご確認ください。
主要参考法令・資料
参考リンク
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次のステップ
食品衛生法への対応状況に不安がある場合は、以下の手順で確認・対応してください。
1. チェックリストで現状を確認 -- 本記事のセクション8のチェックリストを活用
2. 未対応項目を洗い出す -- 優先度の高い項目(営業許可、HACCP、リコール対応体制)から着手
3. 手引書を活用 -- 厚生労働省ウェブサイトから自分の業種の手引書をダウンロード
4. 保健所に相談 -- 不明な点は管轄の保健所の食品衛生監視員に相談(無料)
5. 継続的な改善 -- 定期的な振り返りと最新情報のフォローアップ
食品安全は、事業者の皆様と行政が協力して守るものです。まずは一歩を踏み出しましょう。
*本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案については、管轄の保健所、弁護士又は食品衛生の専門家にご相談ください。*
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