はじめに

ドローン飛行許可申請では、運航マニュアル(SOP: Standard Operating Procedure) の提出が事実上の必須条件となっています。2026年現在、国土交通省はマニュアルの「質」をより厳密に審査しており、不十分なマニュアルは許可申請を却下される傾向が強まっています。

運航マニュアルが求められる理由

国土交通省の視点

`` 【国交省がマニュアル提出を求める目的】 ① ドローン事業の体系性を確認 → 場当たり的ではなく、計画的に運用しているか ② 安全文化の成熟度を測定 → リスク認識がどの程度あるか ③ トラブル時の対応能力を評価 → 予期しない状況での判断フローがあるか ④ 継続的改善の仕組みがあるか → マニュアルを定期的に見直しているか `

マニュアルがない場合のリスク

` 【マニュアルなしでの許可申請】 ❌ 許可却下の可能性:50% 以上 ❌ 許可がおりても「条件付き」:ほぼ確定 ❌ 許可期間が短い:6ヶ月のみ(通常 1 年) ❌ 更新時に大幅な修正を求められる

運航マニュアルの標準的な構成

全体構成(12セクション)

` 【運航マニュアル全体構成】

  1. マニュアルの目的・対象
  2. 機体情報と仕様書
  3. オペレーター資格要件
  4. 飛行前チェックリスト
  5. 飛行計画と予報確認手順
  6. 飛行中の安全管理
  7. 飛行後の点検・報告
  8. 緊急時対応フロー
  9. 事故報告手順
  10. 保守・メンテナンス管理
  11. 安全教育・訓練計画
  12. マニュアルの改訂履歴

各セクションの詳細内容

セクション 1:マニュアルの目的・対象

` 【記載例】

  1. 目的
本マニュアルは、さわい行政書士事務所ドローン事業部 が運用するドローンの安全飛行と、法令遵守を達成する ための標準手順書です。

  1. 対象機体
・DJI Matrice 300 RTK × 2台 ・DJI Avata 2 × 1台

  1. 対象者
・認定オペレーター(JUIDA資格保有者)3名 ・支援者(補助者)2名

  1. 適用範囲
本マニュアルは、上記対象機体・対象者による すべてのドローン運用に適用されます。

  1. 有効期間
2026年4月1日~2027年3月31日 (定期見直し:毎年2月)
`

セクション 2:機体情報と仕様書

` 【記載例】 【機体1:DJI Matrice 300 RTK】

  1. 基本仕様
・機体重量:2,455g(バッテリー装着時) ・最大飛行時間:55分(無風条件) ・最大対地速度:19m/秒 ・最大上昇速度:6m/秒 ・最大耐風速:12m/秒 ・飛行可能温度範囲:-20℃~45℃ ・GNSS衛星受信方式:GPS/GLONASS/BeiDou/Galileo

  1. カメラ仕様
・焦点距離:20mm(標準) ・センサー:Full Frame CMOS ・解像度:5,280×3,956(20MP)

  1. バッテリー仕様
・タイプ:Intelligent Flight Battery ・容量:5,935mAh ・定格電圧:15.4V ・エネルギー:91.3Wh ・稼働時間:42分(無風条件) ・充電時間:1時間30分(DJI 65W Portable Charger)

  1. メンテナンス周期
・50飛行時間ごと:プロペラ清掃、外観検査 ・200飛行時間ごと:センサー校正(IMU/コンパス) ・500飛行時間ごと:部品交換キット投入 ・1000飛行時間ごと:メーカー総合点検
`

セクション 3:オペレーター資格要件

` 【記載例】

  1. オペレーターの必須資格
☑ JUIDA認定資格保有者 または ☑ DPA認定資格保有者 または ☑ 国家資格(一等無人航空機操縦士/二等)保有者

  1. 資格の有効期間管理
・資格証を常に携帯(コピー可) ・有効期限が6ヶ月以内の場合、通知 ・更新手続きを2ヶ月前から開始

  1. 訓練要件
・初任者:基礎訓練 5時間以上 ・定期:年1回、安全研修 2時間以上 ・新機体操縦時:タイプ別訓練 3時間以上

  1. 能力評価
・年1回、上司による操縦能力評価 ・評価シート:飛行技術×安全意識 ・不合格者は再訓練を実施
`

セクション 4:飛行前チェックリスト

` 【記載例】 【飛行前チェック(毎飛行・5-10分)】 □ 天候確認 □ 気象庁予報確認(最新版) □ 現地での風速測定 □ 視程確認(最低 100m) □ 機体点検 □ プロペラ目視確認(傷、欠け) □ モーター回転テスト(音、振動) □ バッテリー接続確認 □ カメラレンズ清掃 □ ジンバル動作確認 □ GPS信号確認 □ 衛星数 ≧ 10個(3分待機) □ 水平精度 ≦ 3m □ 安全環境確認 □ 飛行範囲内に人員がいないか □ 周辺に障害物がないか □ 飛行ルートの最終確認 □ システム確認 □ 操縦機のバッテリー 100%確認 □ DJI FlightPlan ルート確認 □ DIPS許可書の範囲内か再確認 チェック完了者署名:_____________ 日時:2026年4月○日 ○○時○○分 `

セクション 5:飛行計画と予報確認手順

` 【記載例】 【飛行計画書作成フロー】 STEP 1:飛行実施 3日前 └─ DJI FlightPlan で飛行ルート作成 └─ 気象庁 10日予報で大荒れ予報がないか確認 └─ 大荒れ予報があれば日程変更を検討 STEP 2:飛行実施 1日前 └─ DIPS で「飛行可否判定」再確認 └─ 空港周辺・禁止区域の確認 └─ 気象庁 3日予報で天候傾向を確認 STEP 3:飛行当日朝(3時間前) └─ 最新気象予報(1時間更新)を確認 └─ 現地到着予定時間の風速を確認 └─ 不安な場合は「天候判定会議」を開催 STEP 4:現地到着後(1時間前) └─ 風速計で実測(3分間) └─ 風速 ≧ 8m/秒 → 飛行延期を検討 └─ DJI FlightPlan でルート最終確認 └─ 飛行前チェックリスト実施 STEP 5:飛行承認 └─ 現場責任者が GO/NO-GO を判定 └─ GO の場合のみ飛行開始 `

セクション 6:飛行中の安全管理

` 【記載例】

  1. 飛行中の監視体制
【配置基準】 ・操縦者 1名(ドローン操縦専任) ・パイロット 1名(副操縦/カメラ操作) ・監視員 1名(周囲の人員・障害物監視) ・現場責任者 1名(全体統括)

  1. 飛行中の通信フロー
□ 15分ごとに現場責任者に無線報告 □ 異常検知時は直ちに帰還指示 □ 通信遮断時は自動帰還(RTH)

  1. 異常時の対応判断
【小異常(飛行継続可能)】 ・カメラジンバルが若干揺れる → 着陸後検査 【中異常(飛行継続困難)】 ・GPS衛星数が低下(10個→5個)→ 帰還開始 ・バッテリー減少が予想より早い → 帰還開始 【重異常(直ちに着陸)】 ・通信遮断 → 自動帰還(RTH) ・モーター異音 → 直ちに着陸 ・墜落しそう → 障害物のない場所へ着陸
`

セクション 7:飛行後の点検・報告

` 【記載例】 【飛行直後(着陸から 1時間以内)】 □ 機体外観検査 □ プロペラに傷がないか □ ボディに傷がないか □ バッテリーが膨張していないか(!重要) □ バッテリー管理 □ バッテリーメーターで各セル電圧確認 □ 異常値(<4.0V)がないか確認 □ バッテリーを屋外で放冷(30分) □ 飛行記録の回収 □ SD カード内のログファイルを回収 □ ドローン本体から飛行ログをエクスポート □ バックアップ用 USB に保存 □ 飛行報告書の作成 □ 飛行時間(実績)記入 □ 撮影画像枚数記入 □ 異常有無を記載 □ 次回メンテナンス予定日を記入 【飛行後 24時間以内】 □ 飛行報告書をクラウドに保存 □ DIPS へ飛行実績を登録 □ 撮影画像の品質チェック `

セクション 8:緊急時対応フロー

` 【記載例】 【シナリオ A:GPS喪失】 発生時の対応 → 高度をゆっくり低下 → 手動操縦に切り替え → 最寄りの安全な着陸地を確保 → ゆっくり着陸 【シナリオ B:バッテリー残量 20%】 発生時の対応 → 直ちに飛行中止 → ホームポイントへ帰還開始 → 着地まで常に高度を監視 → バッテリーを即座に取り外し放冷 【シナリオ C:通信遮断】 発生時の対応 → ドローンが自動帰還(RTH) → ホームポイント周辺で着陸待機 → 着陸後、原因を調査 【シナリオ D:人員負傷事故】 発生時の対応 → 直ちに飛行中止 → 119番通報(救急車) → 110番通報(警察) → 現場撮影(証拠保全) → 国土交通省に報告(航空法134条) `

セクション 9:事故報告手順

` 【記載例】 【発生直後(30分以内)】 □ 被害者の安全確認 □ 警察・消防への通報(人身傷害の場合) □ 現場撮影(被害状況・周囲環境) □ 目撃者の連絡先聴取 【当日中】 □ 保険会社に報告 □ 所属機関の責任者に報告 □ 事故報告書の初期作成 【1日以内】 □ 国土交通省へ事故報告(航空法134条) □ DIPS システムで事故登録 □ 弁護士に相談(必要に応じて) 【1週間以内】 □ 詳細な事故報告書を完成させる □ 原因分析ワークショップ実施 □ 再発防止策の立案 `

セクション 10:保守・メンテナンス管理

` 【記載例】 【メンテナンス記録管理】 日付:2026年4月15日 飛行時間(累積):125時間 確認者:田中太郎(JUIDA認定) 実施内容: ☑ 飛行前点検(全項目OK) ☑ プロペラ目視確認(傷なし) ☑ バッテリー電圧確認(4.15V/セル) ☑ IMU校正テスト(ドリフトなし) ☑ GPS信号テスト(衛星数12個) 次回メンテナンス予定:2026年5月15日(200h時点) 部品交換予定:なし その他備考:異常なし 署名:____________ `

セクション 11:安全教育・訓練計画

` 【記載例】 【年間訓練スケジュール】 Q1(1-3月) ・新年度安全会議:1月(全員参加) ・基礎操縦訓練:2月(新入者向け、5時間) Q2(4-6月) ・事故ケーススタディ研修:4月(全員、2時間) ・機体別タイプ訓練:5月(新機体購入時) Q3(7-9月) ・応急救護訓練:7月(全員、3時間) ・緊急時対応ドリル:8月(全員、2時間) Q4(10-12月) ・年間飛行総括報告会:11月(全員) ・マニュアル見直しワークショップ:12月 【訓練実績の記録】 各訓練受講者の署名&日時を記録し、 年1回の訓練実績を国交省へ報告 `

セクション 12:マニュアルの改訂履歴

` 【記載例】 【改訂履歴】 版 第1版:2026年4月1日 初版作成 └─ 全12セクション完成 └─ 承認:所長 澤井隆行 版 第2版:2026年6月15日 部分改訂 └─ セクション8(緊急時対応)を拡張 └─ GPS喪失時の対応フローを追加 └─ 承認:所長 澤井隆行 版 第3版:2026年12月1日 年度見直し └─ 全セクション内容確認 └─ 気象規制の最新化 └─ 新規購入機体(DJI Matrice 350)の追加 └─ 承認:所長 澤井隆行 【次回見直し予定】 2027年4月1日(定期見直し)

DIPS申請時のマニュアル添付方法

ファイル形式と命名規則

` 【推奨フォーマット】 PDF形式(推奨) ファイル名:[会社名]_運航マニュアル_v1.0_2026年4月.pdf Word形式でも可(ただし DIPS ウェブ上での表示が遅い) 【ファイルサイズ】 5MB 以下推奨(DIPS アップロード制限) 【構成】

  1. 目次
  2. 各セクション(12セクション)
  3. 附録
・飛行前チェックリスト(別紙 1) ・緊急時連絡先(別紙 2) ・機体仕様書(別紙 3)
`

DIPS での添付手順

` DIPS ログイン ↓ 「飛行許可申請」→「新規申請」 ↓ 「飛行計画書」入力 ↓ 「安全管理体制」セクションで 「運航マニュアル」をアップロード ↓ 「ファイルを選択」→ PDF ファイルを指定 ↓ 「申請内容確認」→「送信」

FAQ:運航マニュアルについて 🐣ピヨちゃん ×🦉ポッポ副所長

🐣 Q1. テンプレートをコピペして提出してもいい?

🐣 Q2. マニュアルはどのくらい詳しく書くべき?

🐣 Q3. マニュアルを一度作ったら、毎年更新は必須?

🐣 Q4. マニュアルに特に力を入れるべきセクションは?

🐣 Q5. マニュアルが厚すぎる場合、削ることはできる?

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すべてのマニュアル要素を自動で管理・更新:

  • ✅ 運航マニュアルのテンプレート提供
  • ✅ セクション別の自動更新(気象・DIPS の最新化)
  • ✅ マニュアル版管理(改訂履歴の自動記録)
  • ✅ チェックリストの電子化(飛行ごとに自動記録)
  • ✅ DIPS 申請時の自動 PDF 生成

参考資料

  • DIPS マニュアル作成ガイド:https://www.dips.mlit.go.jp/
  • 国土交通省 運航マニュアル事例:https://www.mlit.go.jp/
  • JUIDA 運航マニュアル作成支援:https://www.juida.org/
  • 本記事は2026年4月時点の DIPS 基準に基づいています。申請前には必ず DIPS 最新情報を確認してください。